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雨音がずっと続いている。
雨脚は弱まるどころか益々勢いを増して、今は古いガレージの屋根くらいなら突き破って破壊出来そうなほどの勢いだ。
「大丈夫かな、この天気……」
社食の窓からカーテンを少しずらして、真っ暗な空を覗き見る。
呟きに混じって、白い稲光がフラッシュした。
少し遅れて、地鳴りのような雷鳴が轟く。
すっかり仕事で遅くなってしまった。
ロッカーで着替えて後はもう帰るだけだったが、やはりひどく疲れている。
この豪雨、この時間の田舎道なら、歩行者どころか道路を通過する車も疎らで、通りかかるのはせいぜいエゾシカくらいだろうけど。
だとしても、運転して帰らないといけないのは億劫だ。
帰りに社食の自動販売機で缶コーヒーでも買って、一息入れていこうと思った。
雨音だけでしんと静まり返る、明かりの消えた社食の窓際に立ち、財布を出そうとして
「── きゃっ!」
女の子の小さな悲鳴と一緒に、段ボールらしき物が雪崩れ落ちる音が続く。
慌てて振り向くと、社食の入り口辺りで床に手をついて誰かが座り込んでいた。
「あ、相沢さん!?」
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