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試合が始まると私達のペアは、1回戦、2回戦、3回戦とストレート勝ちで、安定した試合運びで順調に勝ち上がっていった。
準々決勝になるとそう簡単には勝たせてもらえなかったが、それでも何とか勝利を手にして、順々決勝、準決勝と勝利し、何とか決勝に駒を進めた。
決勝の対戦相手は、予想通り中国ペアだった。
奈智と私は、中国ペアを打ち破るための練習を積んできたので、決勝では何とか練習通りの試合運びができれば、勝てる可能性は十分あると考えていた。
決勝の前に控室で準備していると、奈智はいつも以上に緊張しているようだった。
そんな奈智を見て、緊張を和らげようと私は声をかけた。
「奈智、私はオリンピックの決勝の舞台に立てただけでも幸せだよ!
これも奈智おかげだよ!
本当にありがとね!」
この言葉は、4年前のオリンピックで、風凛が私にかけてくれた言葉だったことを思い出した。
「奈智、私はたとえこの試合に勝てなかったとしても悔いはないよ!
最後まで2人で一緒に頑張ろうね!」
私が言葉をかけると、奈智はいつもと違った表情で私に話をしてくれた。
「私のほうこそ、沙羅さんと出会えて一緒にオリンピックの決勝の舞台に立てたことは感謝しています。
本当にありがとうございました。
でも、私はどうしても金メダルを取りたいです。」
奈智はいつも優しい口調で話をするが、今日の奈智はいつもと違って強い口調で私に訴えてきた。
「どうしたの奈智?」
私が心配して言葉をかけると、奈智は私に正直に自分の思いを打ち明けてくれた。
「私は風凛姉さんと約束したのです。
風凛姉さんの代わりにオリンピックで金メダルを取るって!
だから沙羅さん、今日はどうしても金メダルを取りに行きましょう!」
奈智は優しい女の子だとばかり思っていた私は、奈智のいつもと違う真剣な態度に圧倒された。
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