2人目の女の子!

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2人目の女の子!

「…梢さん、今、何とおっしゃいました?」 「ええ、だから『2人目の女の子を決めて』と言ったわ」 にっこり満面の笑みで、梢さんは例の女の子のファイルを手に持っていた。 「ちょっ、待ってくださいよ! オレの初仕事は紗雪でしょう?」 「彼女は言わば練習台よ。だってウチの社員だもん」 「へ? じゃあ今度は?」 「半分お客、半分社員…と言うより、バイトかしら?」 「…意味が分からないんですけど」 「そうよねぇ」 梢さんは腕を組み、眉を潜めた。 美女は悩む姿も色っぽいものだ。 オレも本性を知らなければ、ときめいていただろうな(遠い目)。 「まあウチにはお客様でありながら、社員でもある人は多いのよ。だから今度はそういう人を相手にしてほしいの」 つまり…ウチの会社に仕事を頼むことがあれば、逆に頼まれることがある人ってことか。 「…何だかややっこしいですね」 「まあね。でも意外と少なくはないのよ。そういう子」 梢さんは苦笑しながら、ファイルを差し出してきた。 オレは渋々受け取り、中を見る。 そこでふと、気になった女の子を見つけた。 ちょっとつり目で、気の強そうな女の子。 不敵に笑っているけれど、どこか雰囲気がおかしい。 「梢さん、この女の子のこと分かりますか?」 オレは女の子の写真を、梢さんに見せた。 「ああ、梨奈ちゃんね。ちょっと変わったコでね」 真っ赤なマニキュアをした人差し指でメガネを上げ、梢さんはため息をついた。 「彼女、最初はお客だったのよね。それで男性を派遣したの。ところが何を思ったのか、ウチで働きたいと言い出してね」 「気に入ったんじゃないんですか? ウチの会社」 「そうだと良いんだけど…。何かちょっとおかしいのよね」 「まあそもそもウチの会社を使うこと自体、おかしいんですけどね」 「…言ってくれるわね、若様」 「そもそもこの梨奈って女の子、どう見たって女子高校生でしょう?」 紗雪も若く見られたが、あのセックス慣れはどう考えても成人しているはずだ。 「まっ、ね。でも言っておくけど、何も夜のお仕事ばかりじゃないからね」 「分かっていますよ」 ウチの会社は基本的に、『1人がイヤな人』が利用する。 買い物や旅行の相手、または食事の時に呼ばれたりもする。 だから何も全てセックスの相手とは限らない。 「でもオレに話が回ってきたということは、何かしらあるんですよね?」 「…若様、さすが社長の1人息子ね。鼻が利くというか、勘が鋭いと言うか…」 口ごもるところを見ると、本当に何かあるらしい。 「まあ正直なことを言うと、彼女をこのままこの会社に関わらせて良いものかどうか、悩んでいるのよ」 「何か問題でも?」 「うん…まあ何回か、夜のお相手もしたことあるんだけどね」 「どっちの頼みで?」 「あっ、彼女からの依頼で。でも何かこう…報告がイマイチだったのよね」 …つまり彼女は自らセックスの相手を求めて、ウチの会社を利用したけれど、満足はしなかったということか? 「それって男性側に問題があったのでは?」 「こっちもそう思って、いろいろ人材を変えてみたの。そうね、3回の依頼があったんだけど、どの報告もちょっと、ね」 「じゃあ彼女はセックスが好きじゃないのでは?」 「それだったら拒否するはずでしょ? ウチは依頼通りに強行するワケじゃないわ。臨機応変に、お客様に対応するもの」 「…それでは彼女の仕事っぷりはどうなんですか? セックスは無しで?」 「1回はあったんだけど…その時の彼女の報告書は何だかね~って感じ。お客様もちょっと引っ掛かりを残していたみたいだし。でも他の仕事はちゃんと立派にこなしてくれるから、こっちも悩んでいるのよ」 「つまり…結果的に言えば、彼女はセックスに対して何らかの悩みがあると」 「ええ」 「なのに素人のオレに任せると」 「そこはホラ、若い人同士の方が良いと思ってね。ちょうど彼女から依頼が来ているし」 「来ているんですか? 依頼」 「…ええ。ただこの結果によっては、彼女の今後を真面目に考えなくちゃいけないでしょうね。セックスが全てじゃないけど、さすがに気乗りしない相手をずっと派遣するわけにはいかないから」 客も相手も、男が自信喪失してしまうしな。 「でもそれなら別の人を派遣した方がいいんじゃないですか? 確か『性』のカウンセラーもいるんでしょう?」 ウチは何も相手ばかりじゃない。 悩みを打ち明ける相手として、ちゃんと資格を持っているカウンセラーも何人かいる。 「残念ながら、全員スケジュールがいっぱいいっぱい★ それに梨奈ちゃんの場合、本当に若い人がなりやすい原因じゃないかって話なの」 「何ですか?」 「まあそれは実際、彼女に会って聞いてみて。だからあたしとしては、ぜひとも若様には梨奈ちゃんを選んでほしいの」 「…じゃあこのファイルは意味が無かったのでは?」 「まあ一応。でも梨奈ちゃんに目を付けてくれるとは思わなかったわ。やっぱり若様は見る目があるのね」 妙なところで感心されても、嬉しくない。 「ちなみに今回も断るという選択は?」 「我等、秘書軍団とあの社長から逃れる力と勇気があるなら、止めはしないわ」 梢さんはニッコリ笑顔を浮かべたが、メガネの奥の瞳はマジだ。 「…ではこの梨奈って女の子でお願いします」 「分かったわ。それじゃあセッティングはこっちで準備するから」 「はい…」 紗雪の時は勢いでヤッてしまったけれど、今回はもしかしたらやらなくても良いかもしれない。 何せ相手はセックスに何かしらの負の感情を持っている。 話し合いだけで終わるのならば、良い経験になるかもしれない。 その時のオレは、僅かに浮かんだ可能性に喜んでいた。 …そんな簡単に済むハズはないと、実感するのは間も無くのことだった。
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