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6
「オレが言うべきことじゃないかもしれないけど、梨奈は辞めた方がいいと思う。この仕事」
「辞める…」
「ああ、売る方も買う方も。そして本当に好きな人を見つけた方が良い。そうしないと、セックスの幸せが分からなくなってしまう」
オレは不安になって、梨奈を抱き締めた。
腕の中の梨奈はとても華奢だ。力を込めれば、痛がるだろう。
肉体の痛みならばいずれは時間が解決する。
しかし心はそうもいかないのだ。
「若様は辞めた方が良いと言うのね?」
「…ああ、オレはそう思う」
オレの腕に、梨奈の手が触れた。
顔を上げると、穏やかな表情の梨奈がそこにはいた。
「分かったわ。梢さんと相談して、どっちも辞めさせてもらう」
「えっ? 本当にいいの?」
自分から言っておいてなんだけど、こんなにアッサリ承諾するとは思わなかった。
「うん…。何となく合っていないような気がしていたし、梢さん達もアタシの扱いには困っていたみたいだから」
そう語る梨奈はどこか切なそうに遠い眼をしていた。
「辞めるキッカケを探していたのかもしれない。若様に言われたら、何となくすっきりしちゃった」
「そう…。じゃあしばらくは…」
「ええ、禁欲と言うか、セックスしないことにする。確かにアタシ、変に焦っていたかもしれない」
梨奈は甘えるように、背中を預けてきた。
「友達もね、本当に好きな人に捧げたワケじゃないの。だからアタシだってそのぐらい平気だって思っていたんだけど…ね」
そう簡単にはいかなかったことを、言わなくても梨奈は実感しただろう。
「半ばヤケになっちゃっていたのかも。もう止めておくね?」
「うん、そうしな。大丈夫。梨奈ぐらい可愛いコだったら、本当に愛する人と巡り合うことができるよ」
微笑みながら言うと、梨奈も少し笑った。
「その人とセックスの相性も良いとイイけどね」
「それはその…二人の努力次第だと思うよ」
「ふふっ。頑張ることにするわ」
楽しそうに笑う梨奈を見て、オレはようやくほっとした。
不感症ではないことを分からせた上に、恋愛について前向きになれたみたいだ。
願わくば、梨奈が愛する人が、梨奈を心から大事に思ってくれますように―。
祈りにも似た思いを抱きながら、梨奈の体を洗い、後処理をした。
バスルームから出ると、ちょうど梢さんからケータイに連絡が入った。
メールで、もうすぐ時間だと知らせてくれる。
「もう、時間なのね。あっという間だったわ」
苦笑する姿を見ると、今までは苦痛の長い時間を味わってきたんだろう。
そう思うと胸が痛む。
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