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梨奈に手を引かれ、オレは部屋の中に足を踏み入れた。 うわっ…。 オレはあんまりラブホを使ったことがない。 しかしコレが最近話題のラブホの部屋なのか。 壁紙は薄いピンク色に、華やかな花が描かれている。 照明は少し暗く感じたものの、白い色で目は痛くならない。 大きなベッドはこれまたクリーム色で、派手なラブホのイメージからは遠い。 一見すれば、普通の部屋に見えなくもない。 「なっ何かあんまり派手じゃない部屋だね」 オレは気分を軽くしようと、まずは話題を振った。 「ココ、自分好みに変えられるのよ」 梨奈はテーブルに置かれたリモコンを手に取った。 <ピッ> とボタンを押すと、照明が派手なピンク色に染まる。 「うわっ!」 めっ目がチカチカする! 「他にも」 <ピピッ> 今度は天井の照明器具がミラーボールのように回り出した。 色々な光を放ち、部屋が一気に怪しくなる。 「それにホラ」 <ピッピッ> どこからともなく怪しげな音楽が鳴り出し、甘い匂いが鼻をくすぐった。 思わずハンカチを取り出し、鼻と口を押さえた。 「とっ止めて! 何か物凄く危険な感じがする!」 「分かったわ」 <ピッ> 梨奈は素直に止めてくれた。 やっヤバイ…! さすがはウチの経営のラブホテル。 見た目はまともでも、中身は異常だっ! 油断していた自分に、思いっきり嫌気が差す。 いい加減、慣れなきゃな…。 「とっところでさ、梨奈はその…セックス嫌い?」 遠回しに聞くのもアレなので、思い切って聞いてみた。 すると梨奈は困ったような、泣きそうな顔をした。 「…分からないの」 そう言ってベッドに座った。 「分からない? …え~と、気持ちイイとかダメだとか?」 男がイッても、女はイッていない場合が多いのだと、カウンセラーから聞いた。 そこでセックスに不満を持つような女性が少なからずいるのだと。 「…それもよく…。何か…アタシ、不感症みたいで…」 前言撤回! オレでは手に負えません! つーかならカウンセラーがすぐにでも来た方が良かったんじゃないか? 梨奈は不安げに自分の二の腕をさすっている。 「えっと…してても何にも感じない? 少しも?」 すると梨奈はふと遠い目をしたが、すぐに息を吐く。 「多分、ちょっとは感じていると思う…」 けど絶頂には達していない、と…。 相手が早漏ばかりだっとは言えない。 何せウチの社員達はアレでもプロフェッショナル。 そこら辺は大丈夫だと思うが…。 …やっぱりアレだろうか? 梢さんもカウンセラーも口々に言っていたことがある。 「ねぇ、梨奈」 オレは一定の距離を取りながら、梨奈の隣に腰を下ろした。 「梨奈が処女を失ったのって、わりと最近のこと?」 「えっ? …そうね。二ヶ月ぐらい前だったかな?」 「それってウチの社員相手?」 「うん…」 やっぱり、か。 梢さんやカウンセラー、そしてオレも思っていたことがあった。 「あのさ、言いたくなければ答えなくていいから聞いて」 「うん」 「処女を…まあ初体験をしたいと思った理由って、周りにいる友達の影響?」 「えっ?」 梨奈は目を丸くして、オレを見た。 この反応をするってことは、やっぱりだ。
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