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「…うん。親しい女友達が最近、初体験したって話が多くて、あたしも何となく…」 ヤッてしまったワケか。 思わずため息が出る。 ふと梢さんとの会話が頭の中によみがえった。 アレは相手を梨奈に決めた時、まだ2人で会議室にいた時の話だ。 「梨奈ちゃんね、お嬢様学校に通っているの。有名な私立の女子高ね」 「へぇ」 「でも最近じゃあ『お嬢様』なんて嫌味なぐらい、女の子達は遊んでいるみたいでね。ちょっと調べてみたら、梨奈ちゃんの女友達、最近初体験を済ませていたみたい」 「じゃあアレですか? 周りの友達がしたんだから、自分もしようって言う女の子独自の連帯行動ですか?」 「多分ね。でも梨奈ちゃん、恐らくちゃんとした恋愛もまだでしょう。なのにいきなりセックスなんてしてしまったものだから、心と体が追いついていないんでしょう」 さすがの梢さんも困り顔で、コーヒーを飲んだ。 「最近、そういう女の子多いんですか?」 「割とね。初体験を済ませたなんて、昔は恥だったけど、今では自慢の一つだもの。呆れたものよね」 「…でもだからこそ、ウチの会社は儲かっているんですよね?」 「…最近、ピリッとした嫌味を言うようになったわね。若様」 「若輩者なので。それはとにかく、梨奈は自分自身では認めたくはないようですけど、その初体験を心の底では悔いているんですね?」 「カウンセラーの意見も同じよ。好きでもない男を相手に、処女を捨ててしまった。しかも商売男性に。心が拒絶し、体まで拒絶してしまった。だけど自分はそんな子供じゃないんだと思い込んで、次々男性を欲してしまう」 「けれど満たされないのだから、自覚症状がないって怖いですね」 オレは緑茶をすすりながら、肩を竦めた。 「全くね。梨奈ちゃんはそこの自覚をしたくなくて、体が拒絶反応していることに気付いていない。若様にはそれとなく、促がしてほしいのよ」 「厳しい問題ですね。自分をまだ、子供だと認めさせなきゃならないなんて」 「大人になると、自分の子供さ加減が分かってくるもんだからね。まっ、言葉で通じない場合は体で分からせてやって」 「どうやって? 相手は拒絶するんですよ? オレ、さすがに男のプライド捨てる勇気で女は抱けません」 笑顔で話しかけてくる梢さんに対し、オレも笑顔で反論する。 「だかららぁ、体の喜びを教えてあげれば良いのよ」 「残念ですが、オレはそんなテクニシャンではありません」 笑顔で言葉の応酬を繰り返すも、辺りの雰囲気はすでに暗く重い。 「そこはホラ、道具でも何でも使って、ね♪」 「そんなことしたら、若い子はおかしな道へ走ってしまいますよ? ウチはあくまで健全作業なんでしょう?」 「まあ最悪の場合は、媚薬とか…」 「分かりました! 臨機応変にします!」 コレ以上、濃い会話をしたくなくて、無理やり終了させた。 そして回想も終了。 「…あのさ、好きな男性とかいないの?」 「今の所は…。だってウチ、女子校だし」 まあ出会いは少ないわな。 なのにいきなり恋愛の段階ぶっ飛ばして、セックスに走ること自体、『お嬢様』な考えだな。 しかも自分が不感症ではないかということに、負の感情を抱いている。 …コレってまずくないか? 明らかに、カウンセラーの出番だと思うが…。 「ねっねぇ、若様!」 「えっ、何?」 「アタシとセックスして!」 「…はい?」 このコは玉砕覚悟で、オレに挑めと? 「若様でダメだったら、アタシ…病院に行く」 のあっ!?
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