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「鈴木さんが……」
訳を話すと先輩はすぐさま廊下を走り出した。そして迷わずにまだきわ美が巡視していなかった男性部屋へと入った。
「居たわよ」
鈴木さんはご夫婦で入所されていた。だがここの施設には2人部屋が無く、夫婦はそれぞれ違う居室に入っていた。
鈴木さんは夫のベットに入り、夫の腕枕でスヤスヤ眠っていた。
「ま、夫婦だからいいか」
先輩はそのまま居室を出たのできわ美も先輩に続いて居室を出た。
「鈴木さん、最近認知症進んで来てるから気を付けてあげなきゃね。まあ違う人のベットじゃ無くて良かったわよ。それにしても良く歩いて来たわね。明るくなったら怪我が無かったかだけ確認しなきゃね」
そう言って先輩は詰所に戻って行った。
せっかく寝付いたところを起こしてしまって悪かったと反省した。自分がもっと落ち着いて考えていればすぐに鈴木さんを発見出来たし先輩を起こさずにも済んだのに。
きわ美は気を取り直し、残りの巡視へ向かった。再度、一人一人の確認をしているとポケットに入れていたピッチが鳴った。ナースコールだ。きわ美は急いで出た。
「はい、どうされましたか?」
『なんか小さいお婆ちゃんがずっと顔洗ってるの』
きわ美は急いでコールのあった居室へと走った。居室が近付くと確かに水道の音が聞こえてくる。居室の入り口にある洗面台で一生懸命に顔を洗っている後ろ姿が見えた。あの小さな後ろ姿は竹田さんだ。
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