夏の日差し

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今日も天気予報では熱中症に注意と言っていた。僕は母の入院している大学病院にいく為、太陽で熱くなった自転車のサドルにまたがる。道路は陽炎が揺らめいている。まだ午前中だがすでにアスファルトは高温になっている様だ。地面もその上の空気も暑い。こう暑いから僕は眠る事が出来ないのだろうか。 今日も朝の4時には目を覚ましてしまった。寝たのが12時だったので4時間程の睡眠時間だ。 僕は家の近くにある大学病院の自転車置き場に自転車を止めてから、病院の正面玄関に向かう。敷地内には向日葵が植えてあって、全ての向日葵が一定の方向を向いていた。こんなに太陽が照っているのに、もっと陽の光が欲しいのだろうか。 ゆっくりと病院に入ると、冷んやりとした空気が肌に感じられる。僕は身体の汗が渇いていくのが解った。 エレベーターで5階に登り、母の入院している整形外科のフロアーに行く。膠原病の薬である、ステロイドの副作用で骨が脆くなってしまって母は肩を手術して人工関節になったのだ。僕は部屋に入ろうとして一呼吸おいた。何度訪れても女性の大部屋に入る時は躊躇してしまう。全てのベッド周りのカーテンが閉められているのを確認すると 「こんにちは」 と言って中に入った。 「お母さん、お見舞いにきたよ」 カーテンを開けて中を見る。母は寝ていたらしく、目を擦りながら、ベッドの脇にあるスイッチを押して、ベッドを上げ身体を起こした。
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