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絶対に危ない。そう思ったオレらは
ボティスの配下に 見張りに付いてもらって
泰河が車ごと 崖から飛び出すつもりだったことを聞いた。
泰河には、崖から車ごと飛んだ感覚があっただろうと思うけど
実際は、泰河の思惑を察知した見張りの悪魔が
麓にいる時点で術を掛け、幻覚を見せたらしい。
“車ごと 崖を越えた” っていう幻覚を見せた瞬間に
泰河の額にある ハティの印章を刺激して、
うなじにある ミカエルの加護のクロスに
ハティから泰河を守護させようと 反応させた。
泰河は、その作用のショックで 気を失った。
一度 勢いでやったとしても、失敗すれば
同じことは もう出来ないだろう。
人間に備わった生存本能が それを止める... と
見張りの悪魔は考えていたようだけど
泰河は、また車で峠を登り出した。
今度は シートベルトを外して。
誤魔化しでは駄目だ と判断した悪魔は
一度ボティスの元に顕れて、一緒にいたオレらに
“借りる” と断って、天草四郎陣中旗を持って消えた。そうしなければならない気がしたみたいだ。
悪魔は、陣中旗を持ったまま
走っている泰河の車のルーフに 立つと
“生きるのです” という、少年の声が聞こえた っていう。
すると 車は減速し始めて、
車道脇の小さい駐車場へ入って 停車した。
泰河は、空になるまで泣いたようだった。
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