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“ちょっと落ち着いてから帰ろう” って なって
居酒屋に寄って、二人で飯食いながら
佐伯って人に “どうしたの?” と、聞いてみると
『誰かに、“首を吊らないといけない” って 言われて、“そうだ、そうしなきゃいけない” って
思ったんですよね... 』
『“誰か” って? いつ思ったの?』
佐伯って人は、すこし考え込んだようだけど
『あの本かも... 』って 答えた。
『本を買い取った時、カウンターで
ちょっと開いてみたんですよね。
ドイツ語で書いてあるし、解る訳ないんですけど、冷やかしで』
ペラペラとページをめくり
タイプライターの文字を 目で追って見るうちに
“... その日、増水した川に流れていたのは”... と
何故か 意味が解った。
『気付いたら、二時間くらい読んでしまってて。
いや、僕が読んだんじゃなくて
別の声が読むのを 聞いてた気がするんですよ』
他の客が来て、本は置いたようだけど
“首を吊る” って言い出した日の昼、
コンビニで弁当買って来て、事務所で食ってたら
『今夜、首を吊らないといけない』と
本を読んだ声が言った... って ことらしい。
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