第一章 いつもの狩り

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第一章 いつもの狩り

「今日も大収穫ねっ。」 「今日の午後、おじさんが畑を耕しているところを見てね、虫も一緒に掘り返されてると思ったんだ。」 「ねぇ、パパ。このウネウネした動物って何て名前?」 「あぁ、これは『ミミズ』だよ、普段は土の中に住んでるけど、土が掘り返されると一緒になって出てくるんだ、動きが遅いから、簡単に捕まえられるぞ。」 午前3時頃、フクロウ達は餌を捕まえて飛び立ち、家であるうろの中に潜り込む、うろの中には大人フクロウの雄と雌、そして2匹のフクロウの子供である子フクロウ3匹が暮らしていた。 うろのなかは少し狭いが、程よく狭い方がうろの中が暖かくなる、2匹はこのうろの中で3つの卵を産み、無事3つとも孵化して、今は生後1年ほどが経っている。 今は丁度親フクロウから餌の取り方を教えてもらう時期、虫程度なら問題無く取れるが、動き回る小動物に関しては、まだ捕まえた事が一回も無いので、親フクロウが日々お手本を見せているのだ。 子供フクロウ達は、まだ生きた餌を食べる事に慣れていないので、ミミズを咥えてもすぐに落としてしまう、親フクロウはミミズの他にも、飛んでいる虫もパクパク食べていた。 また、子供フクロウがうろの中で見守る中、お父さんフクロウは枯葉の中で這い回っているネズミを仕留める、この森の中には様々な動物が行き交い、餌は探せばすぐ見つかる時もある。 だが餌となる動物や虫が、捕食者である肉食動物の都合に合わせるわけがない、当然動物や虫が警戒して姿をなかなか現さない時もあれば、道行く人や車のライトに邪魔されて食事ができない時もあるのだ。 そんなフクロウ達が頼りにしている餌場は、森の近くにある畑、畑には詩季織々、様々な野菜や花が育てられている、その野菜や花目当てに浮かれる動物や虫も多い。 フクロウ達はその動物や虫を確保して食べているのだ、昼間はよく畑の管理者であるおじさんとおばさんが居るので、容易に手は出せない、だが夜になると暗闇に紛れて、動物や虫達が狙いに来る。 良いサイクルだった、ある程度動物や虫をフクロウ達が食べてくれると、野菜や花への被害は少なくなり、フクロウ達も毎日お腹いっぱい餌が食べられる。この居心地の良い場所を見つけるまで、フクロウ達はずっと都心の空を飛び回り、時には警察に網や麻酔銃を持って追われる時もあった、何故なら2匹のフクロウは、元々人に飼われて、捨てられたからだ。 2匹のフクロウは夫婦として、とある富豪の家で飼われていたが、その富豪の妻が妊娠して、出産した事を皮切りに、今まで大切に飼われていたはずの2匹のフクロウは、「子供に爪を立てる猛獣」として、忌み嫌われてしまった。 もちろん、赤ん坊とフクロウの距離を適切に保っていれば、赤ん坊が傷つけられる事なんてない、だがその富豪達は、フクロウではなく別の生き物に興味を惹かれた影響もあり、2匹のフクロウが都心の空に放たれてしまったのだ。 それから2匹のフクロウは、ゴミ袋をカラスと共に漁り、寝床は公園の木の上だった、だがそのうち2匹のフクロウの情報が人間社会を飛び回り、捕獲騒動に発展してしまった。 2匹のフクロウは決して人に危害を加える事はしなかったのだが、人間がスマホやカメラを向けた時に光るフラッシュや、フクロウに興奮してキャーキャーと騒ぎ立てる人間の声が、2匹の精神を徐々に追い込んでいたのだ。
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