金環食をきみに

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「……うん」 俺から目を逸らしながら、彼女もコーヒーの残りをぐいっと飲み干す。 「美術館とかどうかな、このあと」 「……まあ、悪くないね」 彼女は立ち上がりながら言った。 男が伝票をくしゃりとつかみ、彼女は自分のハンドバッグを引き寄せて立ち上がる。去り際にまた、視線を感じた。 ふたりの姿が店内から消えるまで、俺は身動きもできずにいた。 「ごめえん、お待たせー」 ふたりが出て行った空白を埋めるように、待ち人が現れた。 「JRが遅延しててさあ……ん? 修一くん、どした?」 「──いや」 俺は目元を拭って、恋人に問いかけた。 「あのさ、指輪買うなら金とプラチナとどっちがいい?」 【完】
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