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ねぇ、君の夢は何?
タグ『君・僕・夢で文を作る』
やっと卒業式が終わった。
卒業生達は、体育館から教室に向かう間、3年間の学生生活を思い出す。頭の中で振り返りながら、懐かしさを噛み締める。
教室に戻ると担任の先生が卒業文集を全員に渡した。ここぞばかりに泣き出す先生を生徒達が優しく慰める。
最後のホームルームは呆気なく過ぎ去り、自宅に帰った。
自分の部屋に入るなり、学校の鞄から卒業文集を取り出す。
僕は卒業文集のページを何度もめくり、ある女子生徒のコメントを探そうとした。
ーーー君は、どんな事を夢にしているのか。
なんて書いてあるのか、と本人に聞いても決して教えてはくれなかったのだ。
その女子生徒のクラスを見つけ出した。いつも呼んでいる名前を手で文を追いながら探す。
あ、あった。
女子生徒の名前があり、将来の夢があるという横に目を移す。
『将来の夢は歌手になる事です』
君のイメージとは違う夢で驚いたけれど、これを知られたくなかったと君の事を思うと可愛くもあった。
僕は卒業文集をパタンと手で閉じる。
ピコン。
携帯の通知音が鳴り、やばっ! と慌てて私服に着替える。
準備が終わり、携帯を握り締めた。
足音を立てながら階段を降り、玄関の鍵を閉める。
そして、遅刻をするといつもうるさく言う女子生徒との待ち合わせ場所へ。道路を勢い良く走り出す。
『君が待つ、あの場所へ』
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