【BL】オメガバースの闇

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【BL】オメガバースの闇

一人遊び『冷めたコーヒーみたいな体温の人』 「俺の子供を産んでくれないか?」  目の前で横たわっている少年に言った。  俺はα(アルファ)として産まれ、地位が高い存在と扱われ続けた。身体的、能力的に優れた結果でもある。  きっとΩ(オメガ)であれば、αと結ばれて妊娠と出産が出来る事を嬉しく思うだろう。断る筈がないと結論は決まっていた。 「は? 嫌だ。俺は子供を産む気はない。腹の中に子供など気持ち悪い」  少年は眉を寄せ、下から上へ睨み付ける。  ハッキリと嫌がる少年に対し理解が出来なかった。  何故だ? Ωの人々はそうだと言われたのだけれども。  いきなり俺のシャツを掴み上げて、少年の方へと引っ張られた。 「あんたは良いよな? 子供が出来ない身体で! 俺はこの身体が嫌いだった。低い地位だろうが、月1に来る発情期なんてどうでもいい。あんたみたく妊娠させようとする輩が大っ嫌いだ!」  美貌の持ち主である少年と至近距離。従順であれば、どれ程良かっただろう。  想いは届かず、唾を飛ぶ勢いで、荒々しく乱暴な言葉を吐いてきた。  落ち着かせようと、少年の身体に手を伸ばす。  けれど身体は氷のようにひんやりしていた。言動も合わされば、まるで冷えたコーヒーのようだ。 「じゃあ、子供を望むΩと会えるといいね。さよなら」  少年は手を振り、部屋から出ていた。 「ハイカット! 今から休憩時間を取りまーす」  カンカンと音を鳴らし、ドラマの撮影を中断して休憩に入った。 「お疲れ様です」  少年役をしていた男性が飲み物を持ってきてくれた。 「嗚呼、有難う。少年役と同様に君もΩだけど役柄のαについてどう思ったの?」  有難く飲み物を頂くと男性に対し質問を聞いてみた。かく言う俺は役通りのαだ。  まあ、あんなに子供は欲しがらないけれどΩの人からしたらどうなんだろう、と知りたい所だ。 「そうですねー、Ωなら男性でも子供は出来ますが俺は求められたくないですね。αの方々は自分が産むとしたら、と想像してみたらどれだけ無理か分かると思いますよ」  腕を組みながら、流暢に喋る男性を無言で聞いていた。  最近のΩの人も変わったのだろうか。 「ほら、撮影再開しますよ。頑張って下さい」 「有難う」  休憩が終わり、男性に励まされた。その笑顔がとても可愛らしく発情期なのかと思わせられた。
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