喫煙者のオジサン

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喫煙者のオジサン

タグ『煙草という文字を使わずに煙草を吸うを文学的に表現してみろ』 「ちょっと休憩、行ってくる」  社内のデスクで仕事をしていると、我慢が出来なくなり、椅子から立ち上がる。 「またですか、禁煙した方が良いですよ。今じゃ喫煙者は肩身狭いですし」  隣に居るのは、後輩君だ。  禁煙派の後輩が嫌味っぽい話し方で、現代の喫煙者による狭さを喋り出した。 「はいはい」  スーツのポケットにある箱を確認し、後輩君の話は申し訳ないが聞き流す。  歩いたまま、後輩君に対し後ろで手をひらひらと振った。  休憩=喫煙所に行って吸うというのは同類だと感じている。  昔は許された物が今じゃ駄目だの一点張りだ。最近の若者は、何も分かっていない。  これこれ、と喫煙所に入り、早速箱から白紙が巻かれている物体を取り出す。  待ちに待った物、君に会いたかったよ。  ライターで巻物の先端に火を付けた。香ばしい灰の香りがほのかに漂う。  巻物を待ち、火が付いてない部分を口に含む。すぅーと口いっぱいに吸う。  嗚呼〜。こんなに美味いという事に・・・・・・。  吸う度に落ち着くし癒され、満たされる。中毒の症状なのは分かっていても止められない。  そういうもんだろ。  口いっぱいに吸った煙を一気に吐く。  喫煙所の中は、灰色の煙だらけになった。
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