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prolog
この世界は、いつも少し黄色い。
「……おい、ふざけんなよ!!開けろって言ってんだろ!?」
何の音もしない、そこに、人間みたいな声が入っていく。
悲痛な声色は、音と共に色を重ねる。
でもなんだか、いつも聞いている声だった。
怒っている、多分その声。
「聞いてんのかよ!!いっつもいっつも……!!」
飽きた、聞き飽きた、言葉。響き。
今はなんだか世界が真っ黒だから、余計にうるさくて、いたかった。
返事をしなくちゃ、だってそれは人として当たり前、だから?
無駄に大きな、大きすぎた廃墟のような場所で、家族の愛を確かめる。
――開けられ、ないよ。
またどこかで、世界が黄色く歪んだ。
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