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それから、移動中に会話が途切れることはなかった。リアクスのおかげもあるのだが、無駄話から重要な話、つまりは機密事項も多少は知ることが出来たのだ。
椅子の背もたれに自身を預け、いっそ二度目の睡眠を始めようかとした時。ガンドゥルが口を動かした。
「そうだアズダさん、リアクス達以外に交流された方は覚えていますか?」
「ハフィズとヴィエットと……ミミティー、ヂェーニャとドヴィ、バトルショーでザラとラッドだったか……あとスクワシ、って名前だけは聞いたが」
記憶の中を彷徨っていた名前を、できる限り顔と共に思い起こす。ガンドゥルは斜め下を向き、少し考えたような仕草をしてから、布越しに喋った。
「分かりました、ありがとうございます。ヂェーニャさん達と接されたのですね」
「あの、交流……なんとか機関の」
嫌な思い出だ。脚が地面に埋まるなんて、経験なんてしたことなかったのに。
「郊外交流機関ですよ。あのお二人、中々苦労人ですから。一日中見ず知らずのお偉い様と会話なんて……」
「それはすげえ分かる、俺なら死にそう」
やっと共感を覚えて安心した。同じ部分が無いと関わり辛いなんて、自分でも最低だな、と思う。
「…………お菓子」
「これ美味しいなの、兄さんちょっと食べてみてなの~」
たわいない会話に、アンユは交じれているだろうか。
「あとザラさんとラッドさん。あのお二人とはよく話しておいて損はないですよ。ザラさんからは色々聞けます」
「機密事項とかも、か?」
彼は顔色一つ変えずに頷く。
「……俺が聞いたこと、少しお話しましょう。昔はアズダさんと同じ立場でしたから、居心地の悪さはよく分かるので」
その時、ちょっとガンドゥルの目が細まった気がした。
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