歓迎なんかしてねえよ

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 それでも、俺は『彼』のことも好きで………これは、まなに対する『裏切り』じゃないのか?  この時代は、男はともかくとしても、女は結婚前まで『貞操堅固』なはず。口付け(キス)はまだしも、躰の関係は持たないんだろう。  時代が時代って言えば、それまでだけど、俺はそうじゃないんだもん。俺の『初めての人』はまなで、『まなの初めての人』も俺だった。  けど、決して軽い気持ちや興味本位ではなかった。俺は本気でまなが好きで、まなも俺を好きだと、愛していると言ってくれた。  家族(いもうと)としてではなく、女としての(おれ)を愛している、と………。  絆されて、流された感もなくはない………けど。俺は俺なりに真剣だった。  まなは俺の『最初の男』で、俺はまなの『最後の女』だった。まぁ、最初の女でもあったけど。  最初で最後の本気の恋だった………そう思ってたのに。 「…あの………忍さん。、もういいと思いますけど………」  遠慮がちに掛けられた千鶴の声に、俺は『ハッ』とした。やべ、温め過ぎた?卵酒じゃないんだから、沸騰させたら駄目だよな。  アルコール分飛んじゃうし、『お酒は(ぬる)目の燗がいい』って八代亜紀も歌ってるし。  うん。好きだよ、八代亜紀。俺も作者も。ついでに、亡くなった養父さんもね。
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