62人が本棚に入れています
本棚に追加
/367ページ
それでも、俺は『彼』のことも好きで………これは、まなに対する『裏切り』じゃないのか?
この時代は、男はともかくとしても、女は結婚前まで『貞操堅固』なはず。口付けはまだしも、躰の関係は持たないんだろう。
時代が時代って言えば、それまでだけど、俺はそうじゃないんだもん。俺の『初めての人』はまなで、『まなの初めての人』も俺だった。
けど、決して軽い気持ちや興味本位ではなかった。俺は本気でまなが好きで、まなも俺を好きだと、愛していると言ってくれた。
家族としてではなく、女としての忍を愛している、と………。
絆されて、流された感もなくはない………けど。俺は俺なりに真剣だった。
まなは俺の『最初の男』で、俺はまなの『最後の女』だった。まぁ、最初の女でもあったけど。
最初で最後の本気の恋だった………そう思ってたのに。
「…あの………忍さん。それ、もういいと思いますけど………」
遠慮がちに掛けられた千鶴の声に、俺は『ハッ』とした。やべ、温め過ぎた?卵酒じゃないんだから、沸騰させたら駄目だよな。
アルコール分飛んじゃうし、『お酒は温目の燗がいい』って八代亜紀も歌ってるし。
うん。好きだよ、八代亜紀。俺も作者も。ついでに、亡くなった養父さんもね。
最初のコメントを投稿しよう!