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日常
柊様は元々御神木な所為か日向が好きだ。
学校に行った時も午後日差しが差していると机の上でふんわりと太陽の光を浴びている。
その姿を見ていると、ときどきとても穏やかな気持ちになって、眠くなってしまう。
あたたかな日差しとふわふわとたたずむ柊様。それを見ていると段々瞼が重くなってうつらうつらとしてしまう。
それから時々、雨の中を静かにたたずんでいる。
そういう時、一瞬柊様の周りの色が消えたみたいに見えることがあって、ああ彼は俺らとは全く違うのだと思う。
ただ、今はそれはあまり怖いことだと思わなくなった。
◆
「たまには神社に寄って帰りませんか?」
柊様に聞くと一度だけ屈伸でもするように伸び縮みする。
何度かお願いをして触らせてもらったけれど、遠目にはたわしに近い形状なのに柊様はふわふわと柔らかい。
特に嫌がっている感じはしないので学校帰りだけどそのまま神社へ向かう。
相変わらず神社には人気は無い。
柊様の本体と呼んでいいのだろうか。この神社の御神木は柊だ。
クリスマスの飾りで想像する葉と少し形が違って、あまりギザギザとはしておらず流線形をしている葉はつやつやと輝いてとても綺麗だ。
その葉が太陽の光を浴びて優しく光る様子を見るのが、子供の頃から好きだった。
いつの間にか神社にはあまり行かなくなっていたが、こうやって見上げる御神木はとても好きだ。
「綺麗ですね。」
相変わらず柊様から返事は無い。
いつか神主さん達みたいに柊様と話ができるようになるのだろうか。
「俺ね、小さい頃御神木の葉集めるの好きだったんですよ。」
一枚、落ちていた葉を拾いながら言う。
柊様は返事の代わりなのか頬にすり寄る。
「これ、持って帰ってもいいですか?」
拾った葉を見せながら柊様に聞くともう一度柊様は頬に触れた。
それを確認するために視線を肩に向けると、柊様の輪郭が滲む。
じわじわと背が伸びあっという間に俺より高い男性の姿が目の前に現れた。
あの夜、笛の音を聞かせてくれた時と同じ姿だった。
今日は昼間な分真っ白な肌が一層良く分かる。
「柊様……?」
呟くようにかけた声に相変わらず返事は無い。
けれど柊様は、俺の持っている柊の葉にそっと口付けを落とすと、見たことも無い甘やかな笑みを浮かべる。
思わず、瞬きも忘れて見入ってしまう。
柊様は再び輪郭が溶けていくとすぐに元の姿に戻った。
肩に乗った柊様を見て俺がふふっと笑うと柊様も笑い返した気がした。
手に持っていた、柊の葉を指の腹でそっと撫でてから、自宅に向かって歩き始めた。
了
お題:しあわせな様子
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