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綾瀬の前職は、警官だ。
それも、かなり位は上の方で、なんと警視であった。
しかしそれを全く意に介さず、巡査と一緒に街中を回る風変わりな男だった彼は、部下からは大変慕われていたが、上層部からはとても煙たがれていた。
それ故ある事件で、警察の失態責任を誰かが取らなければならなくなった時に、綾瀬は全てを被って辞職する事になったワケだが…………。
(※詳しくは『ナラズモノ』をご覧ください)
だが、綾瀬を慕っていた人物が、今尚警察組織内で多いのは確かだ。
警官を辞め一般人になったが、砕けた様子でニコリと微笑みかけて「ちょっとだけでいいから、教えてくれよー」と話し掛けると、綾瀬の事を知っている当時の部下たちは、ついつい口が軽くなってしまう。
警視でありながら巡査と軽口を叩いていた頃の、昔を彷彿とさせるような飄々とした綾瀬には、依然として人の警戒心を解く不思議な魅力があった。
そして綾瀬は、路上駐車をしていた車の2人組――――つまり張り込みをしていた警官から、少しだけ情報をもらうことに成功していた。
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