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   ◇ 「幸村晴夫名義で、向こう一年分のアパートの家賃が振り込まれている、だって? 」 「そうなんです。大家には、ハルオは既に亡くなった事は伝えたんですが……頑固な老人でして、一年は部屋をそのままにしておくと」 「頑固って……」  首を傾げる綾瀬に、実直そうな顔をした若い男は(一般人の格好をしているが正体は警官だ)肩を竦めて見せた。 「いやまぁ、ぶっちゃけちょっとボケてる感じなんです。しかしこちらの権限で引き払えなんて言えないですし」 「部屋の検証は? 」 「何も出てきませんでした。……というか、幸村はこのアパートは倉庫代わりに使っていたようで、実際に暮らしていたのは別の場所なんですよ」 「ほぉ? どこだい? 」 「それは――さすがに教える事はできません」 「おいおい~」 「勘弁してください、綾瀬さん」
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