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オレには、一人親友と呼べる男がいる。
そいつとは、幼稚園からの長い付き合いだ。
お互いに、初恋が誰だったのか、はたまた何人と付き合ったのかの恋愛遍歴はもちろん、背中のホクロの数まで知っているような仲だ。
だが、幾ら仲が良くても、ずっといつまでも一緒とはいかず、そいつとは中学校までは同じだったが、高校からは、別れてしまった。
それでも、よく連絡を取り合っては遊んだものだ。
距離も環境も関係ない。
今は、ケータイ一つあれば、どこでも繋がる世の中なんだ。
オレは、ずっとそいつを親友だと思っていた。
離れていても、ツーカーに通じ合えるダチだと。
だが、どうやらそれは――オレだけだったらしい。
大学を卒業して、社会人となってからのオレはそれなりに忙しく、そいつとは連絡だけは取り合っていたが、なかなか直に会えずにいた。
親友のそいつはミュージシャンになる夢があるので、大学を卒業しても就職はしないで、バイトを梯子しながらバンド活動を頑張っていた。
その様子はSNSに頻繁にアップされていたので、オレはマメにチェックしては応援していたものだ。
『頑張れよ!今度のライブも成功するといいな!』
『新曲カッコいい!ギターの腕も上がった!』
よく、時間を見つけては書き込みもして、ささやかながら応援をした。
直接会えない分、頑張ってオレにできる仕方でフォローをしたんだ。
そしてある日、ようやくオレにも余裕ができたので、そいつと、時間の取れる夜に待ち合わせをした。
オレは、仕事終わりのスーツ姿のままで、急いで約束の場所に向かったのだが……
―――そいつが、オレの知らない奴らとたむろして笑いあっている場面に、偶然遭遇したんだ。
(何だよ、今日は二人で会うんじゃなかったのかよ―――…)
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