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時子がホステスとして勤めるスナックへ、大田原源一郎が最初にやって来たのは、今から半年前のことだった。彼はうさぎをペットとして繁殖・販売するビジネスを立ち上げ、一代にして巨万の富を築いた大富豪であった。
運よく大田原に気に入られた時子は、何とかしてこの男の財産を自分の物にしたいと考えるようになった。
「ねえ、源さん。あなたの財産ってどうやって管理してるの? やっぱり銀行に預けてあるの? それとも不動産とか金塊なんかに変えてるの?」
大田原の隣に座っていた時子はぐいぐいと身体を押し付け、猫なで声で彼に尋ねた。
「ワシは金は手元にないと気が済まんさかいに、全部家の中で管理しとるで」
そう言って大田原は不敵な笑みを浮かべた。
それは時子にとって好都合だった。現ナマを盗むのが一番簡単で足がつきにくいことを時子は経験から知っていたのだ。
「まさか時子さん、大田原さんの財産を狙ってるんじゃないですか?」
この声の主は、大田原から見て時子の反対隣に座っていた後輩ホステスの姫華だった。
「何てこと言うの、姫華ちゃん。源さんに失礼でしょ」
「そりゃおもろい、取れるもんなら取って見い!」
大田原は時子の肩を抱き、自分の方へ抱き寄せると、豪快に笑うのだった。
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