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それから数ヶ月のときが流れ、時子は始めて大田原邸の寝室に足を踏み入れていた。そこには1辺50cm程度の大きさの黒い金庫があった。
「ねえ、源さん。あの金庫には何が入ってるの?」
「そないなこと急に聞くやなんて、それは『禁固』100年の刑やな」
そう言って大田原は満足げに笑った。時子もまたホステスとしての技術を駆使し、自然な笑顔を作るのだった。
大田原はこういった小学生が考えそうなダジャレやなぞなぞといった類が大好きだった。店での接客中にもしょっちゅうそれが披露され、付き合わされる時子はうんざりしていた。
それ以外にも、招き猫やらふくろう(不苦労)といった縁起物をコレクションするのが趣味で、家中それらの物で溢れ返っていた。
「ワシのこと、たっぷり満足させてくれたら教えたってもええで」
その魅惑の言葉に、時子は自ら進んで大田原と男女の仲となったのだった。
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