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フランツお父さんの『女友達』もやって来た
うな垂れたように休息をしていた、フランツは立ち上がる。冷蔵庫に近寄り、ドアを閉めようとした。その時、全身を鎧で身を包んだ人間の妙齢な女性が現れる。
「フランツさん!」
「誰だ?」
「覚えていないんですか、わたし、アンジェラです」
「アンジェラさんか」
「誰よその女!」
ドランゴンの牙を手にしながら、ルイーゼがアンジェラを視線で突き刺す。その目は、夫の愛人を見下すようであった。
フランツが、アンジェラに手を差し出していた。アンジェラが身を低くして、冷蔵庫から出た。
「アンジェラさん紹介するよ。妻のルイーゼ、娘のクララ。妻とはこっちの世界で結婚したんだ。クララはこっちの世界で生まれたんだ……。お母さん、クララ。お父さんが冒険者組合で剣術師範をしていた頃、生徒だったアンジェラさんだ。挨拶をしなさい」
ルイーゼもドラゴンの牙を床に置く。手を鳴らして思い出し顔をしていた。
「アンジェラさん、懐かしいわ、もうこんなに大きくなったのね」
「わ、大魔法使いのルイーゼ先生。お久しぶりです。もう十年ぶりですね。でも身長は伸びてませんわ?」
ルイーゼの視界は、感激の涙で滲む。自分より年下のアンジェラへの皮肉は放置する。
「やっと、やっと、門がもとの世界、マルバス大陸と通じたのね」
***
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