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第一章・―病魔―
「余命、十一日ですね。……えっと、今日を入れて十二日かな」
体調不良が長引いていると思って、意を決して病院で診てもらった結果がこれだ。
特に驚く事もなく、やっぱりか……とだけ思う。
「透明病ね。証明書、出しますから、窓口で受け取って下さい」
「はい」
慣れているためなのか、医者の口調はあくまでも淡々としたもので、事務的な対応に、逆に救われた気分になる。
世界の歴史は、病魔との闘いに彩られてきた。
病気が発生すると医者が努力して特効薬を開発する。そして病気は撲滅されたかと思いきや、また新たに形を変えて発生するのだ。
まるで、人類と病魔のいたちごっこである。
でも、そんな歴史に終止符を打とうとする病魔が発生し始めた。
現在確認されている病魔は十一種と実に少ないが、発症すれば、ほぼ百パーセントの確率で死ぬか、もしくは“人間”として生きる機能が壊れてしまう。
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