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とにかく彼とは、結婚を前提に付き合ってきたらしい。
幸せの絶頂だった。
そんな矢先に告げられた、容赦ない余命宣告――。
病魔の名前を告げられ、それを両親、恋人に伝えた途端、全てから見離された(この辺は彼女の手記にて、詳細が描かれている)。
幸せの絶頂から、突然絶望のどん底に落とされ、独りで迎えなければいけなくなった“人間”としての最期の場所に、あの丘を選んだ。
そこは彼女がまだ元気だった頃に、彼から初めてデートに誘われて、結婚を前提に付き合って欲しいと言われた場所だった。
……最期に見た彼女の顔は、笑っていたんだろうか……?
泣いていたのかな?
何とも言えない、やるせない気持ちを抱えて最後のページに到達する。
そこはゼリーや何だか分からないモノでべちゃべちゃで、一目には判別しにくい文字で、たった一言が記されていた。
――ありがとう。
……悲しい言葉だ。
最期まで、周りに感謝しながら生きたのか。
そんな生き方が出来たのか。
急に空しくなって、もう寝る事にした。
明日、隣にいるのは、どんな人なんだろう。
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