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第二章・―二日目―
――翌日、朝早くに目が覚める。
もう出勤するための身仕度もしなくて良いというのに、習慣とは恐ろしいものだ。
伸びをして、欠伸を堪えながら洗面所にいき顔を洗って歯を磨く。
何て事のない日常だが、これを欠かさないようにしないと、心の平穏も訪れない気がするのだ。
鏡を見て、確認する。
……昨日より、薄くなったのだろうか? 見た目に分からず、取り敢えず考える事を止めた。
洗面所から出てすぐ目についたのは、置きっぱなしにしていた彼女の証明書であった。
遺族に手渡す事は端から考えていない。
いくら本人が、自分を見離した両親を許していたとしても、多分向こうは違う。
今更こんなモノを渡されても迷惑だろうし、まず第一に、彼女の最期を看取った自負からか、所持し続けるのが一番良いのだと思っている。
これは彼女が生きていた唯一無二の証だ。
だから、引き出しの中に仕舞ってから、これからどうしようか頭を悩ませる。
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