第二章・―二日目―

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 公園のベンチに腰かけると、途端にノイズ音と共に彼の輪郭が激しく揺らぐ。  もう表情も分かりにくくなっている。  スマホが唯一の伝達手段だろう。  今日は良い天気だな。あんたに逢えた。良い日だ。  彼が言う。 「そうですね。良い日です」  とはいえ、末期の人を相手にして、何を言えば良いのか分からない。  昨日の彼女はまだ、意思の疎通をしなくて良かったから大丈夫だったけど、今日は違う。  会話が可能なのだ。  ……そんな顔すんなよ。確かに俺はもう、今日にも駄目になるんだけどな。  しまった。顔に出てしまっていたみたいだ。  逆に気を使われてしまって、気まずくなって束の間顔を逸らす。  すると、肩を叩かれ、ノイズ音がした。  スマホの画面を見ると、そこにはちょっと意外なお願いが書かれている。
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