第二章・―二日目―

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 ありがとな。これでやっと、俺も、心おきなく死ねるってもんよ。 「……っ」  一瞬、どきりとした。  “死”という概念を受け入れる世界になりつつあっても、やっぱりどこかで怖い気持ちは残っているものだ。  まして、病魔によっては意識を正常に保ったまま、徐々に壊れてしまうしかないものだってある。  そんな時間を、全員が本当に穏やかに過ごせるかなんて、誰にも分からない。  ……この人は“死”を受け入れているのだろうか?  だとしたら、凄い事だ。  こんな風に、心置きなく逝けたらとても良いだろうな。  な、もう俺、動きも鈍くなってきちま、てざん。  ……文章がおかしい。本当に彼の言う通り、とうとう身体の自由が利かなくなってきているんだろう。  あえ、よ。おれ、うれじ?  いよいよノイズ音が酷くなってきた。  もう、“人間”の形をしていたのか、それとも最初から違うモノだったのかすら分からずに、スマホが取り落とされる。
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