第二章・―二日目―

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 ――ぶぶっ!  ……それが、彼が最期に発した“音”、だった。  それ以降、一切動かなくなった。  この人は、きっと、最期の瞬間まで笑っていたんだろう。  そんな気がして立ち上がる。すぐ目の前まで迫りくる“死”というものと、この人は最期まで逃げずに、真正面から向き合って生きたのか。  少しだけ理解した気がして、ふと手帳に視線を落とす。  そこには彼が今まで歩んできた“人生”が描かれている。  このまま朝食を摂る気にもなれなくて、もう何だかよく分からない形にまでなってしまった彼の隣で、これからどうしようかとしばらく思案する。  そうしてゆっくりと立ち上がり、カフェまで足を運んでテイクアウトすると、家路へと向かう。  手帳をまるで宝物のように、大事にポケットにしまうと、また公園に差しかかったところでふとベンチを見た。  ……“そこ”に彼の形はもう、いなかった。  消えてしまったのだ。  この世から跡形もなく。
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