第一章・―病魔―

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 そうなればもう、発症した人達は世間から、そして世界からも“人間”として見なされなくなる。  今まで、どんな理不尽な病魔とも闘って打ち勝ってきた人類だったが、これらにだけは勝てなかった。  この敗北によって、人類の考えは大いに変わってしまった。  不老不死とか、不老長寿とか、死にたくないなんて言ってられない。  むしろ死というものを素直に受け入れ、余命を宣告された人間程、静かに余生を過ごすようになったのだ。  先刻医者から渡された証明書は、そのための免罪符と言っても良い。  病魔に侵された人間は例外なく死ぬ、もしくは“人間”というモノから遠ざかり少しずつ壊れていくため、短い期間でも楽しみながら余生を過ごせるように、証明書を持つ者は、あらゆる場面で特別扱いされるようになる。  証明書は、医者の手によって発行された時点で自動的に、社会人なら勤めていた仕事先は退職扱いとなり、学生ならば登校しなくて良くなる仕組みだ。
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