第一章・―病魔―

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 肯定した、と見て良いんだろうか?  もう、ちゃんとした“人間”の形を保つのも難しいんだろうか?  震えながら手を伸ばす様は痛々しくて、思わずしゃがみ込む。 「な、何かしたい事があるんですか……?」  ケーキ病って確か、感染源は不明だけど、かかってしまうと余命までに徐々に全身がゼリー化して、心臓が果物になったり、脳がクリームになったりするんだよな……?  柔らかいから、叩いたりの刺激を与えるだけで、ゼリーが飛び散って、もう二度と“人間”に戻れなくなる。  病状が進行してしまうと患者の思考もおかしくなるため、まともな会話が望めるかは分からない。 だけど、先刻「ありがとう」って言われたのを、まだ希望があると考えて質問してみたのだ。 「お、お……が……。も、い……て……」  ぷるぷるぷるぷる、ぽとっと、彼女が口らしきところを動かす度に、ゼリーが揺れて地面へと落ちていく。
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