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「大丈夫ですか? ちょっと辛いと思いますけど、これに乗って下さい」
女性がゆらゆら、ぺちゃぺちゃと、ゆっくりと移動して、ようやくの事で台車に乗る。
「少し揺れますけど、なるべく衝撃は与えないようにしますから」
それだけ言って、病院のある方向へと歩き出す。
急ぎたい気持ちはあるが、下手に衝撃を与えてゼリーを飛び散らせてもいけない。
彼女がまだ“人間”の内に、“人間”でいられる内に、丘に連れて行ってあげたかった。
「……着きましたよ」
長い時間をかけて辿り着くと、俯いたままの彼女に声をかける。
ぴちゃりと、ゼリーが一滴落ちるが彼女は気にせずに、這うようにして台車の上から草むらへと落ちる。
べちゃりと、少し形は崩れたがまだ“人間”のままだ。
「あ、あ……。よ、し……あ……ぎ……さ」
手を伸ばし、何かを乞うように呟くと、頬だった場所からぽたぽたとゼリーが溢れ落ちる。
……泣いてるのかな?
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