思い出は桜のように綺麗だった

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奈雪を裏切るような事をしたくない! 走りながら必死にその事だけ思い続けた。 「奈雪!...奈雪!」 呼吸が乱れて大きな声を出ない。 それでも叫び続けた。呼び続けた。 だけど春休みなのもあり多くの人がひしめくこの場所では僕の声など簡単に人混みに飲み込まれ消えてしまう。 もう時間がない。腕時計は2時59分。 残り何秒あるのだろう...。 辺りを見渡すけど人だらけで見分けがつかない。「ごめんなさい」を連呼しながら頑張って人混みをぬって前に出る。 そこには大きな噴水のある水場が広がっていた。 何で皆この周りに集まって...? その時だった視界の端に映った女の子。 真っ白のトップスに長めのスカートを履いていてその姿を見た瞬間僕は走り出していた。 奈雪! だけど僕の声はまた消された。 大勢の歓声によって。 噴水から出る七色のライトに照らされた様々な強さで吹き出るそれはキラキラ光る宝石のように綺麗だった。 奈雪は一瞬僕の方を見て驚いた表情をした。 だけど噴水から出る水飛沫を浴びてお互いに濡れた姿を見て笑った。 その後並んでその噴水ショーを見続けた。
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