思い出は桜のように綺麗だった

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「桜が満開のこのシーズンだけ噴水ショーがあるんだ...。覚えてる?」 観客が散っていくなか僕達はまだ終わったショーの特等席に居た。 噴水ショーは5分程で終わってしまった。 キラキラの宝石は跡形も無く消えてまた寂しい水場へと戻っていた。 本当にあっという間だった...けど。 「今思い出した...。 そういえばあの時も見たよねこれ」 「うん。信也君との病院以外の唯一の思い出」 あの日、互いの両親は初めて顔合わせした。 緊張しながら話しをする両親を前に、 僕と奈雪は満開の桜の下を皆より少しだけ先を手を繋いで歩いた。 「綺麗な桜が見たいな」 いつもと同じ病室で寝かされてる奈雪は窓から僅かに見える桜を羨ましそうに眺める。 「あるよ!綺麗な桜の見える場所」 学校の宿題を病室にある机でやっていた僕がそう言うとパッと振り向いて「行きたい!」と目をキラキラさせて言った。 この後本当に大変だった。 「行きたい!行きたい!」と駄々をごねる奈雪を静めるのは不可能で結果外出許可を貰って見に行く事になった。 「本当にあの時は大変だったよ...。」 「ごめんて...。 ううん。本当にごめんなさい」 「そんなに謝らなくても」 「今日、来てくれないんじゃないかって...思っちゃった。信也君は約束を守るって分かってたのに」
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