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メリーゴーランド
遊園地のチケット売り場前にはすでに綾乃と西原さん、それに隼人がいた。
「ごめん。勝手にこいつが来るっていうから……」
「わ、イツキ君だ!」「さすがイツキ君召喚士~!」
女子のテンションが高い。
隼人はいつもと変わらない無表情だ。全然楽しそうではないが、これが普段通りの隼人だった。
「じゃ、行こうか、隼人君」
綾乃はしっかり隣をキープしている。
とりあえず役目を果たしてほっとした。あとは適当にアトラクションに乗ったり買い物をしたりしていくうちに、綾乃と隼人を二人きりにすればいい。
イツキと西原さんとぼくの3人で、帰ってしまうという作戦だ。
後で「スマホの充電が切れて連絡がとれなかったー」とか、「スマホ持ってきてなかった」とか適当に言い訳をしておしまい。
***
「隼人君とイツキ君、絶叫系つよいんだね…。イツキ君に至っては、爆笑してたね」
乱れた黒髪を直しながら、引きつった表情を浮かべる西原さん。
「イツキはどっかおかしいし、隼人は無口だからな」
ぼくは買ったばかりのチュロスを齧る。
「失礼だなー」
「本当のことだろ。昔から絶叫系は強いんだよな」
「ヒカルが怯えすぎなんだって。子供の頃、ジェットコースター乗った時に「止めて~!」って号泣したろ」
「……そんなことあったっけ?」
「都合のいい記憶だなー」
「はーい! 私次メリーゴーランドに乗る。隼人君、一緒に乗ろ」
綾乃がそういうと、ぼくは西原さんと目配せをした。
「分かった。俺らは恥ずかしいから、ここで見てるから」
「わたしメリーゴーランドみたいなぐるぐる回るアトラクションに乗ると、バターになりそうで怖いんで無理なんです~」
と、西原さん。
やがて愉快な音楽が鳴って、メリーゴーランドがぐるぐる回りだす。
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