65人が本棚に入れています
本棚に追加
大人になっても
「あ!綾乃と隼人君、2人で馬車に乗ってる~」
綾乃は嬉しそうに手を振っている。
隼人はぼんやりとこちらを見ている。
「んじゃ、私たちはそろそろ行こうか」
3人はそそくさとその場を後にした。
「2人に会わないように、ずーっと遠くの反対側に行こうよ!」
「そうだね」
イツキが頷く。
「最期にメリーゴーランド乗ったのいつ?」
話題もないので、ぼくはそんなどうでもいいことを聞いた。
「んーと、去年乗ったかな?」
「西原さんは女の子だから乗るか。イツキは?」
「小学生の頃。ヒカルと」
「ぼくもあれ以来だわ。恥ずかしくてもう乗れねー」
「これからどんどん、恥ずかしくてできないこと増えてくるのかな」
西原さんは少し寂しそうだ。
「俺はどんなに恥ずかしくても、やりたいことはやるよ。大人になっても、メリーゴーランドに乗りたくなった時は乗ると思う」
(……珍しいな。イツキが熱く語るなんて)
「素敵だと思う。ヒカル君は?」
「ぼくは……」
ぼくはどうだろう?
最初のコメントを投稿しよう!