65人が本棚に入れています
本棚に追加
パレード
綾乃と隼人を二人っきりにする、という作戦は成功した。
西原さんが「3人でキャラクターの帽子を買ってかぶろう」というので、ぼくは耳の垂れた犬の帽子に、バカでかい黒いサングラスをしていた。
イツキと西原さんは、スタンダードに小さいネズミの耳だ。
遊園地なんてくだらないと思っていたけど、意外にも楽しかった。
最近は悩みも多かったが、色んなことを忘れられた。
「あっ、私、もう帰らないと!ピアノ教室あるんだ」
「え、もう帰るの? パレードもあるのに」
「残念だけど!二人は見ていけば? 今日は楽しかった、ヒカル君、イツキ君」
「気を付けてね」
イツキが手を振る。
「西原さん、また明日」
ぼくも手を振る。
西原さんの二つ結びの頭が見えなくなる。
「やっと二人きりになれたね」
イツキが真面目な顔で冗談を言う。
「キッッッツ!」
「あはは」
「風、寒くない?」
今日のイツキは妙に優しい。
「寒くない」
ヘラヘラもあまりしていないし、ぼくを挑発もしない。
「犬のきな子なんだけどさ」
「うん」
「死んじゃった日。一緒に泣いてくれたよね」
「なんだよいきなり」
パレードも終盤だ。
暗闇の中で黄色や赤、紫、たくさんの色が輝いて消えていく。
最初のコメントを投稿しよう!