パレード

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パレード

 綾乃と隼人を二人っきりにする、という作戦は成功した。  西原さんが「3人でキャラクターの帽子を買ってかぶろう」というので、ぼくは耳の垂れた犬の帽子に、バカでかい黒いサングラスをしていた。  イツキと西原さんは、スタンダードに小さいネズミの耳だ。  遊園地なんてくだらないと思っていたけど、意外にも楽しかった。  最近は悩みも多かったが、色んなことを忘れられた。 「あっ、私、もう帰らないと!ピアノ教室あるんだ」 「え、もう帰るの? パレードもあるのに」 「残念だけど!二人は見ていけば? 今日は楽しかった、ヒカル君、イツキ君」 「気を付けてね」  イツキが手を振る。 「西原さん、また明日」  ぼくも手を振る。  西原さんの二つ結びの頭が見えなくなる。 「やっと二人きりになれたね」  イツキが真面目な顔で冗談を言う。 「キッッッツ!」 「あはは」 「風、寒くない?」  今日のイツキは妙に優しい。 「寒くない」  ヘラヘラもあまりしていないし、ぼくを挑発もしない。 「犬のきな子なんだけどさ」 「うん」 「死んじゃった日。一緒に泣いてくれたよね」 「なんだよいきなり」  パレードも終盤だ。  暗闇の中で黄色や赤、紫、たくさんの色が輝いて消えていく。
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