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ーー今朝は、滅茶苦茶性格が悪い幼なじみの夢を見た。
通り雨が止むと、草と土の匂いがした。
バスは時間通りに来ないらしい。田舎の朝は静かだ。車通りもない。誰もいない、異世界にたった1人でいるみたいだ。
ふと隣を見ると、同じ高校の制服。大きな鞄を肩から下げている。
(おかしいな? このバス停から乗ってくるやつはいないはずなんだけど)
ジロジロ見るのも怪しいので、ぼくはチベットスナギツネのような薄目で見ることにした。ぼんやりしたの人影が近づいてくる。
「ヒカル。大きくなったね」
「その声は……イツキ!?」
昔の面影を残したまま、成長した梛木樹が立っていた。
「悪夢だ……」ぼくはしゃがみ込んだ。
「悪夢も夢のうちだよ。また会えて嬉しいよ」
樹は、真っ暗な瞳を近づける。
「お前、ぼくに嫌がらせばっかしてたろ?! よく普通に話しかけられるな!」
「そうだっけ? とにかく、戻ってきたよ。またよろしくねー」
風を吹き上げながらバスが到着する。
「会えない時間が愛を深めるって本当だと思わない?」
「思わない」
「好きだよ、ひー君」
高校生になっても、凶悪さは変わっていないようだ……。
むしろ妙な感じに悪化している気が……。
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