65人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
絶対に許さない
「それよりお前、今日新しい彼女とイチャつきながら帰ってたろ? 見えてたぞ。あれ誰だよ?」
「誰だっけ。暇つぶしだから、よく覚えてないんだよね」
イツキは冷たく呟いた。
「極悪人……。コロコロ彼女変えてると、そのうち女たらしだって嫌われるぞ。せっかく転校して学校に馴染んだのに」
「別に嫌われても良いよ。あの子たちだって、たぶん本当の俺のことが好きなわけじゃないし」
「面倒くせえなああ。本当の自分てなんだよ。
初めからいないんだよ、本当の自分なんてもんは!……ていうか、イツキ、今日いつも以上に嫌な感じじゃないか?」
「悩んでる」
「何に?」
「全然、思い通りにいかないから」
目を伏せて、虚ろな表情のままのイツキを見ていると、心配になってくる。
罠や嘘だったことも多いのに、性懲りもなく。
「普通は思い通りにならないもんなんだよ。お前は思い通りになってる方だろ。……なあ、体調でも悪いのか?」
ポンと肩をたたく。
「ひー君。許してくれる?」
「何を」
「昔のこととか、全部」
「許さん!」
ぼくは、重苦しい空気が我慢できなくなった。
イツキは、あははと少し笑い。
「じゃあ、俺も今日ヒカルが隼人くんとしてたこと、絶対に絶対に許さないから」
狂気に澄んだ目をして言った。
最初のコメントを投稿しよう!