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約束
「すごいっ! 久世君! モテ期到来の手相!!」
占いが趣味の西原さんが、ぼくの手相を一目見るなり叫んだ。
「え~? どこが? 昆虫でも好かないよ、こんなデリカシーのない男」
綾乃は、まだ歓迎会でぼくがしたことを根に持っているようだ。
「謝っただろ!」
「ダメ。お詫びに、隼人君と一緒に出掛ける約束して」
「はあ!?なんでぼくと隼人が出かけなきゃならないんだよ……」
あれ以来、隼人とは気まずくなってまともに話していない。
「何おかしなこと言ってんの? 私と隼人君のデートの約束」
「ああ、そういうこと。でも、隼人はそういうことしないと思うよ」
「ヒカル、1番仲いいでしょ! 今週の日曜日、皆で遊ぼうって誘って」
「でも、今ちょっと隼人とは微妙というか…」
「ケンカしたの?」
「ケンカではないけど」
「じゃあ、決まりね。ありがと!久世」
綾乃はウキウキした様子で、無理だといえる雰囲気ではなかった。
「仕方ないな……おい、隼人!」
隼人は、廊下のロッカーで教科書を鞄に詰めていた。
「あのさ、今週の日曜日、綾乃とか皆で遊ばない?」
「いいよ」
「えっ……そんな簡単に決めていいの?」
「なんで? そのために誘ったんでしょ」
「ああ。まあそうなんだけど…。後で綾乃から連絡くると思うから、ライン交換しといて」
「うん」
隼人はほんの少しだけ口元を綻ばせた。
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