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三時氏の一生
その時計は、三時で止まっている。
三時氏がうまれたのは六年前だ。他の十一名は、すでにそろっていた。
電池さまがやってくると、彼は決められた場所に立ち、自分の番がくるのを待った。
はじめての任務は、とても緊張したのを覚えている。二時氏から長針と短針、それから秒針を受けとり、歯車に乗って正確なリズムを頭で唱えながら、必死で針をまわした。四時氏に針をバトンした時には、すっかり疲れ果てて座り込んだものだ。
やがて慣れてくると、片手でも針を回せるくらいになった。自分の番がくるまでは眠って過ごせた。
そんな三時氏たちの働きぶりは、様々な人間の目にさらされ、最終的にはヤマダさん家に連れていかれた。
ヤマダさん家には二人の子どもがいた。三歳と一歳、どちらも女の子だ。ヤマダさんは、三時氏の立ち位置である「3」の数字に、金色のシールを貼った。
「この短い針がね、金色に来たらおやつだから。それまでは我慢ね」
そして、天井近くの壁にぶら下げられ、三時氏たちはヤマダさん家族の生活を見下ろすことになった。
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