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まだ幼い時、汽車に乗っていた。
夜だったと思う。
僕の家庭もかなり貧しかったのだが、四人掛けの前の座席に薄汚れた父親らしき人と幼い女の子が乗っていた。
女の子はアルマイトの弁当箱を広げて食べ出した。
おかずはほとんど何もなかったような記憶がある。
こちらは親父が遊び人であちこちに借金したりして家族は毎日、喰うにも困っていた。
ちなみに私は姉、兄、僕、妹の四人きょうだい。
僕の家より更に貧しそうな女の子をちらちら眺めていたら夜汽車の汽笛が鳴り、更にもの哀しくなった。
こっちは明日にでも夜逃げをしなくてはと切羽詰まっているのに僕は、こんな貧しい女の子は明日からどうなるのだろうと要らぬ心配をしていた。
馬鹿は死ななきゃ……
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