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ある日、仕事を終えてホテルから出てきた時に、ばったりと出くわしてしまったのだ。
その時の相手は、雄久さんだった。
「……あ」
清矢は俺と雄久さんを見て固まっていた。
雄久さんは何か察したのだろう。小声で「じゃあね」と言ってそっと立ち去った。
混乱のあまり、頭がどうかしてしまいそうだった。何とか、この場を取り繕わなければと思うけれど、上手い台詞が浮かばない。
「……そっか、やっぱりな」
その時の清矢の顔は今でも覚えてる。まるで、世界で一番醜いものを見るような嘲りの表情だった。
「最初からお前がホモだって感付いてはいたんだよ。明らかに俺に食いついてたし」
ずっと、何となく感じてた彼との距離。きっと最初から清矢は、客として営業トークしてくれてただけだったんだ。「仲良く」なんて、表面上だけのものだったんだ。
胸の奥が、一気に冷えていくのが分かった。
「いくらでやらせてんの? お前突っ込まれてんの? 気持ち良いの、それ」
侮辱、嘲り、嫌悪。
今まで彼の内側に隠れていたものが一気に垣間見えて、まるで心臓を掴まれ喉を締められているかのように息苦しかった。
「き、気持ち悪いと思うけど、俺にとって清矢は特別なんだ……! 違うんだ!」
「……特別、ね。それって好きってこと?」
ずい、と清矢が近づき、まじまじと俺を見詰める。今までで一番近い。胸が痛い、苦しい。
「……多分」
好き、とは言えなかった。彼が、どう考えても俺を好きではないと分かってしまったから。言ってしまったら、目の前の全部が壊れてしまいそうで怖かった。
「じゃあ、さ。特別な俺だったら、いくらなわけ?」
「……え?」
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