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「ちょっと興味湧いたんだよ、男に突っ込むのって気持ち良いのかって。特別な俺ならさ、タダにしてくれるよな?」
背筋が一気に凍りついた。彼の言っている意味が、彼の内側のどす黒い欲望が、分かったから。
あの時、俺は何と言うべきだったんだろう。「馬鹿にするな」と一発ぶん殴って全部おしまいにしてしまえば良かったんだろうか。
でも、そんなことは出来なかった。初恋だったんだ。このまま終わらせたくなかった。
彼に恋人が居ても、俺に肉体関係だけを求めているとしても、ここで終わらなければ、繋ぎ止めておけば、もしかしたら――。そう思ってしまった。
「……いいよ」
その日、清矢のバイトが終わるのを待って――バーには居辛かったから自分の店の控室で暇を潰した――、清矢の家に向かった。
道中は始終無言だった。
小綺麗なマンションの三階の角部屋。黒いドアを開けると、白を基調にした清潔感のある空間が広がっていた。
「上がれよ」
玄関で靴を脱いでいる時、棚に飾られているクマと白ウサギの縫いぐるみが目に付いた。
1Kの一般的な間取り。小さなテーブルとその上に置かれたノートPC、参考書とCDが収められている小さな棚、銀色のパイプベッド。
男の一人暮らしにしては整っている。彼女が掃除してくれているのだろうか。
キッチンの方で、清矢はビールを飲んでいた。
前に、酒はそんなに強くないと言っていたのを覚えている。飲む時は、頭で色々考えるのを辞めたい時、現実逃避する時だ、と言っていた。
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