New moon

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New moon

あの満月の夜から、勝也は少しずつ学校を休むようになった。 馬鹿らしいと思うかも知れないが、勝也は次の月が隠れる新月に向かって、学校を休む日数が増えていったような感じもした。 次の新月に、月の光が届かなくなった時、勝也も闇に紛れて、何処かに消えてしまうのではないか、という不安を感じるようになった。 勝也の休みを心配したり、不審がったりするクラスメイトも増えていった。 心配になった俺は勝也にラインするようになった。 勝也の答えは決まって、 「体調が悪い。」「明日は学校に行くから。」などと、休んでいる理由を隠しているような返事しか来なかった。 そして、とうとう新月の日が来た。 学校の勝也の席は、いつも通り誰も座っていない。 学校から帰宅し、心配になって、勝也にラインをしたが、既読にならない。最近は連日学校を休んでいたため、心配になって電話をかける。それも駄目だった。 「あいつ、どうしちゃったんだよ……。」 満月の日、二人で話をした時の勝也の顔が甦る。 「どこに隠れてもまん丸お月様はさ、金色の光で何処までも俺らのこと照らしてくんのよ。」 部屋のベッドに転がって、月のでない暗闇を感じていた。 「だから時々、それをぶっ壊して、夜を真っ暗にしたくなる。そしたら何処へでも隠れれるのにな。」 ……このまま何処かに、隠れちまうなんてこと、無いよな…… そう思った瞬間、不安な気持ちで押し潰されそうになる。 ……本当に、どっか行っちゃうなんてことがあったら……!! 心臓の音が早くなる。 嫌な汗が流れ出す。 携帯をひっつかむと、学校のジャージのまま、ドタバタと階段を駆け降りる。 「あんた、こんな時間にどこ行くの?!」 時刻は21時を回っていた。 でもそんなの関係なかった。 俺は勢いよくドアを開けると、気だるい夏の夜に飛び出した。
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