full moon

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full moon

俺は君と月を見上げる。 夏の唸るような暑のピークは過ぎたけど、 9月はやっぱりまだ暑い。 夜になって、家族に内緒で二人で公園に抜け出した。 半袖に半パン。 山の上にある公園の、ちっちゃな塔に登った僕らは、じーじーという虫の声を聞きながら、塔の上から見えるちっちゃな町を見下ろした。 「満月だよ、勝也。綺麗だなー。 あーあ。 夏休みも終わっちゃったなぁ。」 中学生の日常は、大人が思っているより忙しい。始業式が終わると、直ぐに実力テストが始まり、部活が始まり通常の学校生活に引き戻される。 「だなー。」 勝也が答える。俺は野球部で夏休み真っ黒に焼けたっていうのに、勝己は女みたいに真っ白な肌をしている。 因みに勝也は陸上部だが、まぁこの様子をみると、部活には行ってないみたいだ。 勝也とは中学校になってから仲がよくなった。趣味が似てたり、勉強が出来なかったり。共通点が沢山あったから、直ぐに仲良くなった。 「そいや、よく抜け出して来れたよな。 俺の家もそこそこ門限厳しいけど。勝己のおやじももっと厳しいだろ?」 「まーなー。」 勝己は苦笑いだ。 俺は塾で勉強してくるって、嘘をついた。 親は中学に入ってから勉強勉強とやたら厳しい。 昨日まで夏期講習に塾のテストに、学校の実力テスト。中1からそんなに勉強させたいかってくらい詰め込まれる。 家にいると「またゲームばっかりして、勉強しなさい。」なんて言われるから、今日くらいは息抜きだと自分に言い聞かせた。 別にこれといって理由はないが、たまに家が窮屈に感じる。 そんな時はこうやって、勝己と2人で夜の公園に逃げ出すのだ。 コンビニで買ったアイスキャンディを、袋から取り出して勝己に渡す。 「さんきゅ。」 二人して地べたに座り、アイスを食べる。 コンクリートでできた塔の床が、ひんやりとお尻を冷やした。 「満月見てるとときどきさ、こーんなに大きな金槌で、バラバラにしたくなる。」 「なんだよそれー。」 急に勝己が馬鹿げたこと言い出したから、げらげら笑って見せた。 「馬鹿みたいだろ。」 勝也は笑ってなかった。 「どこに隠れてもまん丸お月様はさ、金色の光で何処までも俺らのこと照らしてくんのよ。」 俺はアイスをごくんと飲み込んだ。 「だから時々、それをぶっ壊して、夜を真っ暗にしたくなる。そしたら何処へでも隠れれるのにな。」 …… なんて答えればいいか分からなかった。 「ふざけんなよー。」でも「なにいってんだよー。」でも「大丈夫?」でも、俺の持っている言葉のなかには、勝也の求めている答えは無いように思えた。 「そっか……。」 自分の呟いた言葉は、余りにも頼りなくて、その言葉が勝也に聞こえたか聞こえてないかすらわからなくなった。
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