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体調不良でも、花は咲く
「よし、これで花粉対策はオッケーね」
薬局で貰った点鼻薬を鼻に注入し、私は言った。
「でもマスクもした方が良いわね」
私は紙のマスクをつけた。今日は外出するためマスクは必要だ。
薬も大切だが、花粉を鼻に入れないためにもマスクはつけないと。
私は全身鏡を見て、自分の服装に問題ないか確認する。
「大丈夫、決まってるわね」
私は言った。
新しい服に心を踊らせ、私は家を出た。
四月は私にとって憂鬱な時期だ。花粉症が辛いのも当然だが、去年別れた彼氏のことを思い出すからだ。
原因は私の花粉症だ。別れた彼氏いわく健康な人でないと付き合っていられないという。
別れた彼氏は病気と無縁だったからそんな事が言える。しかし私だって好きでなった訳ではない。
今考えれば、別れて正解だったと思う。人の体を労れない人間と付き合っても傷が深まるからだ。
「どうかな、ここ」
「うん、最高だよ」
屋内で桜を見渡せることに私は満足した。
彼は修司くんと言う。まだ半年しか付き合ってないが、花粉症の私に配慮してくれる所は気配りが上手い彼の良いところだと感じた。
「ごめんね、私が花粉症のせいで外で見られなくて」
私は修司くんに謝った。
直に見た方が桜だって綺麗だと思うはずだ。しかし修司くんは「良いんだよ」と言った。
「莉未ちゃんの体調の方が大切だからね。莉未ちゃんが満足してくれるなら俺も嬉しいよ」
修司くんは迷いなく断言した。
修司くんの気遣いに私は胸が熱くなった。前の彼氏は絶対に言わないことだからだ。
「有難う、修司くん」
私は心を込めて礼を言った。
鼻の調子は悪いけど、修司くんと見る桜は最高だった。
四月は思い出したくない月だったが、修司くんのお陰で忘れられない月になりそうだった。
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