闇の住人達

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闇の住人達

新月の夜、ゆりかごをくわえた大きなカラスが濃紫の夜空を飛んで、広場にやってきた。カラスは広場の中央にゆりかごを置くとひと鳴きして飛び去っていく。 「私達の新しい仲間が来たわ」 「おうちに連れて行ってあげましょう。どれどれ、住所は……?」 老若様々な魔女達が広場に集まり、ゆりかごを囲む。ゆりかごの中には女の子の赤ちゃんと、大きめのタグカードが入っている。 20歳くらいの魔女はタグカードを手にする。 「Yの34番地がこの子の家みたいね。名前はシャルロットですって。素敵なお名前ね」 「ではシャルロット、私達がおうちに連れていきましょう」 年老いた魔女は腰にたずさえた杖を手にすると、何やら呪文を唱えた。するとゆりかごはふわりと浮き上がる。 「目指すはYの……3番地だったかしら?」 「しっかりしてください、34番地ですよ」 若い魔女が住所を教えると、年老いた魔女は思い出したかのように大きく首を振り、ゆりかごを先頭に歩き出した。 彼女達魔女は箒で空を飛べるが、こうして新しい仲間が来た時だけ、あえて歩き回って新入りを歓迎した。 魔女の歳の取り方は人間とは大きく違い、1週間で急成長する。どれくらい成長するかはそれぞれ違い、見た目が歳を取れば取るほど強い魔力が宿り、長生きする。 16歳までいってなんとか一人前と認められ、それより若い魔女は大して魔力もなく、寿命も短い。 彼女達の平均寿命は600年だ。これまでの記録を見る限り、最長寿命は3027年、最短寿命は58年。つまり、魔女の人生は最初の1週間で決まると言っても過言ではないのだ。
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